婦人科の病気の早期発見のために

無症候化で高まるSTD(性感染症)のリスク

膣カンジダや性器ヘルペス、クラミジア感染症など、性行為を通じて感染する病気を、総称して性感染症(STD)といい、一昔前は「性病」と呼ばれていた梅毒、淋病もここに含まれます。法改正によってかつて4種類だった「性病」は「性感染症」という名称に変更されましたが、現在でも性病という名称の方が浸透率が高いため、現在でもそのまま使用されていることが多いです。

カップルで受けたい性病検査

淋病、梅毒、軟性下疳(なんせいげかん)、鼠径リンパ肉芽腫瘍は昔から流行を繰り返してきた恐ろしい病です。鼠径リンパ肉芽腫瘍の患者さんは現在ではほとんどいませんが、一時は鳴りを潜めていた淋病や梅毒は、再び若い年代に流行しています。

淋病の流行はオーラルセックスによる喉への感染者の増加が問題となっています。梅毒の患者増の原因は不明ですが、2010年以降は東京や大阪などの都市部を中心に感染が拡大しており、この2年は過去最高の患者数を記録しています。

現在、最も恐れられている性感染症はウイルスを完全に駆除することができないエイズ(後天性免疫不全症候群)です。エイズを発症する前の段階ならHIVの増殖を抑える抗HIV薬を複数服用する「剤併用療法(HAART:highly active antiretroviral therapy)」で、エイズの発症を抑えることが可能になりましたが、エイズ発症の段階にまでいくと死に至ります。

重大な結果を招く恐れのあるこれらの性感染症は、症状や予防についての知識がありますが、クラミジア感染症や膣カンジダ、トリコモナス膣炎、尖圭コンジローマ、性器ヘルペスなどは症状や予防についての知識が乏しいため、発症してから慌てて婦人科を受診する女性が増えています。

近年は20~40代の幅広い年代のカップルがフェラチオ等のオーラルセックスを頻繁に行っているため、性器同士の接触だけでなく口から感染する性感染症も増えています。性感染症は全部で20種類くらいあり、クラミジアや淋病などは治療が遅れると不妊の原因になることがあります。

性感染症が怖いのは、パートナーの外見からは病気を持っているかどうか判断ができないことです。信頼していたパートナーから移された場合、自身の感染のショックは勿論、パートナーの感染源(浮気相手、風俗の利用)の存在を知り、二人の関係が壊れることも少なくありません。

特に最近の病気は症状が出にくくなっており(=無症候化)、以前のようにおりものや性器周辺の不快な症状が危険サインとして現れることが少なくなっているのです。

性感染症の予防にはまず、不特定多数とのセックスを避け、信頼できるパートナーとセックスをする際も必ずコンドームを使用することです。確実な避妊手段としてピルを飲む女性が日本でも増えるにしたがい、コンドームの使用率は低下していますが、ピルは性感染症の予防にはなりません。

膣や外陰部にかゆみ、痛みを感じたり、排尿痛、黄色や緑色のおりものがでる、おりものが臭いなどの症状があっても、婦人科の内診が恥ずかしいため受診が遅れがちになります。エイズ以外の性感染症は、抗生物質を中心とした治療で完治するので、ためらわずに婦人科を受診しましょう。パートナーも一緒に検査・治療しないと何度も感染を繰り返すので注意が必要です。

主なSTD(性感染症)の種類と症状

婦人科の内診が不安な患者

梅毒
この数年猛威を振るっている性感染症です。感染初期には米粒大から指くらいの大きさの硬いしこりが現れます。感染後3か月すると発熱、頭痛、全身倦怠感、全身に赤い発疹がでるなどの症状が現れます。特効薬のペニシリンがある現在は、この段階で治療を開始すれば大事には至りません。

淋病
女性ではおりものの増加、排尿痛、尿道から膿が出るなどの症状がありますが、約半数の症例は自覚症状がないとされています。男性はペニスから膿が大量に出たり、激しい排尿痛があるため、発見は容易です。合併症としては、女性は子宮内膜炎や卵管炎、男性は前立腺炎、副睾丸炎を起こします。

感染者とコンドームを使わないセックスを1回行うだけで、感染率が30%ほどあること、そしてオーラルセックスで喉に感染することが、現在でも患者数が多い大きな理由です。女性は不妊症や子宮外妊娠の原因となります。

膣カンジダ
カビの一種であるカンジダ菌(真菌)に感染することで、陰部が赤くなり激しいかゆみがあります。おりものは白くてボロボロした状態です。疲労や生理などで体の抵抗力が落ちると再発を繰り返します。

尖圭コンジローマ
ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染して、膣や外陰部、肛門に鶏のトサカ、あるいはカリフラワー状の尖ったイボがたくさんできます。尖圭コンジローマ専用のクリーム薬「イミキモド(ベセルナクリーム5%)」が登場した現在は、治療が容易になりましたが再発例も少なくありません。

トリコモナス膣炎
黄色もしくは黄緑色のおりものが増加し、膣や外陰部に激しいかゆみ、痛み、灼熱感があります。外陰部から膣にかけて炎症で赤くなったりします。

性器ヘルペス
単純ヘルペスウイルス(HSV)に感染して、性器周辺に赤い水ぶくれがたくさんできます。水ぶくれが潰れると潰瘍ができ、排尿時に尿がヒリヒリ染みたり、下着がこすれて激しい痛みを感じたりします。初感染時は症状が重症化する傾向にあり、高熱が出ることもあります。

ウイルスは抗ヘルペスウイルス剤でも排除されずに神経節に潜伏して生息し続けます。そして生理やセックス、風邪などが刺激となって再び活動を活発化させて、不快な症状を引き起こします。

クラミジア感染症
国内では感染者数が最も多いとされる性感染症で、高校生から20代、30代など若い年齢層に流行しています。自覚症状はあったとしてもおりものの増加、排尿時の違和感くらいなので、感染が見過ごされたままパートナーとのセックスで感染を拡大するのが大きな問題です。

近年の傾向としてフェラで喉に感染する女性が増えています。クラミジアは不妊症や子宮外妊娠の原因となるため、新しいパートナーができた、コンドームを使用しないセックスを続けている女性は、一度はクラミジアの検査を受けておきたいものです。